「忘れえぬ声を聴く」(黒岩比佐子著)を読む
ノンフィクションライターの著者が亡くなり、その後に出版されたエッセイ集です。 評伝を描く時には、膨大な資料を読み、多くの活字を書き、それが本として出版させるのならまだよいが、遺族の反対があった場合は徒労に終わってしまうと綴られています。 初めての評伝の時には、100万円の赤字だったそうです。 この世の中には多くの評伝がありますが、それが真実という訳ではありません。 渋沢栄一といえば、偉大な人物として描かれている場合が多いが、妻妾と同居していて子供までもうけていたとなるとアレッという感覚にもなる。 (そういえばガンジーもそんなアレッという感じになる) 逆に、北大路魯山人に関しては傍若無人というイメージがあるが、魯山人を利用した取り巻きがそのように吹聴したということだそうです。 確かに、白洲正子の本の中に魯山人のことが記されている文章を散見することがあるが、傍若無人という感じではない。 我々は、どうも無責任に他人を評価し判断しがちだ。 著者には、もっと多くの評伝を描いてもらい、無責任という風評を取っ払ったものを描いてほしかった。 この本の最後にはこう記されている。 「そして、いよいよあと一日しか生きられないという状況になったとき・・・・ 最後の一冊の最終ページ読み終えて、満ち足りた思いでこの世に別れを告げる。私には最高に幸福な人生だと思える。他になんの望みはないが、墓碑銘にこんなふうに彫ってもらえたらうれしい。 『本を愛し、臨終の瞬間まで本をはなさなかった』と。」
by masagorotabi
| 2015-07-29 19:25
| 読書日記
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