カテゴリ:読書日記( 361 )

うるわしき戦後日本

「うるわしき戦後日本」(ドナルド・キーン、堤清二著)を読む

お二人の対談形式で書かれてあります。

吉田健一について書かれていたのが印象的です。
父吉田茂が亡くなって、別荘を西武に売って得た分配金で3年余りイギリスで暮らしたそうです。
無類の酒好きでお金が無くなって戻ってきたそうですが(笑)、お金には無頓着な気質だったようです。

吉田茂が亡くなった時に、政界に進出しろと多くの人に言われたそうですが、それを拒んだら「あいつは頭がおかしい、全然世の中のことがわかっていない」と思われたそうです。
吉田健一のことを理解していないからそういった言葉を放つのでしょうけど、吉田茂もまたほんとうの姿を理解されていなかったと吉田健一は語ったそうです。

前にも書きましたが、開高健は自分の肩書を小説家と記したそうです。
小説に行き詰まり、山口瞳(だったかなあ)の勧めでノンフィクションの世界へと向かったわけですが、小説家開高健にこだわった訳を読み手は理解しなくてはいけないのだろうなあと思います。
吉田健一も小説家吉田健一にこだわったのでしょう。



by masagorotabi | 2019-03-23 19:52 | 読書日記 | Comments(0)

日本文学史序説

「日本文学史序説 上」(加藤周一著)を読む

読んでも知らない古典の名前があったりして、1割未満しか理解できないのですが、文学の系譜や日本の歴史などが大まかににしろ感じられます。

前にも書きましたが、明治期に日本に訪問したイザベル・バードが、市井の人の会話の中で過去の日本には何もないという言葉を聞きました。
文学の系譜を見てみれば、日本には優れた文化というものがあったと理解できます。
輸入したものを「日本化(この本の中でよく使われている言葉です)」して、洗練、熟成するというのが日本の長けた部分です。

明治維新という急激に変わった時代では、「日本化」ということが出来ず、安かろう悪かろうという工業製品、中国の猿真似と揶揄され本来の日本の良さを発揮することが出来なかった。
戦後は、同じ間違いをせず日本の特性を発揮して「日本化」という洗練、熟成したものを作り上げたと思います。

古典(日本文学)を学ぶということは、現代を透徹するという意味合いもあるのではないだろうかと、この本を読んで感じました。


by masagorotabi | 2019-03-17 20:11 | 読書日記 | Comments(0)

明日は昨日の風が吹く

「明日は昨日の風が吹く」(橋本治著)を読む

1997年から2009年までに広告批評に載せた散文です。

1999年に起きた東海村事故の件にも言及しています。
多くの日本人は、こういった事故が起きても「原発は必要」と容認していますが、著者は原発は安全かどうかの問題ではなく、たとえ安全だとしても今の日本人にそれを操作するの能力はないと記しています。
放射能事故が起きても、防護服が一度も登場しなかった、そんな国が他にあるのだろうかと・・
そして、こうしたことが分からないほど日本人は馬鹿なのだろうかとも。
(結果的には当たってしまっていますね。)

2007年に書かれたものには、1980年初めには日本人は「何かを共有する」習慣を失いかけ、バブル経済で日本人のメンタリティーが代わったのではなく、それ以前にバブルを受け入れる体制を作っていたとあります。

by masagorotabi | 2019-03-15 20:07 | 読書日記 | Comments(0)

考古学

「石の虚塔(発見と捏造、考古学に憑かれた男たち)」(上原善広著)を読む

岩宿遺跡を発見した相澤忠洋、旧石器の神様芦沢長介、2003年に捏造が発覚したF氏、三人の人間模様や考古学のことが描かれています。

私の住んでいる秩父市も住居跡が発見された話題になり、秩父原人チプーやお菓子、ワインといったものも販売されて盛り上がりました。
専門家からは、どうしたこの場所に住居跡があるのか不審に思った方もいましたが、そうした疑問を抹消されてしまうことが、当時の考古学界にはあったのでしょう。

捏造がニュースで話題になった時に、外国の女性考古学者が、こうしたことはよくあることなので落ち着いてくださいといったコメントを読んだことがあります。
実際、一般人はなんの被害を被っていないいし、人間なんて出来の悪い生き物なので、振り返るとどうってことのない出来事だったと女性考古学者はそう言いたかったのかもしれません。

現在のF氏のことも描かれていますが、自分の指を自ら切断してしまったり、ひっそりと暮らしています。

秩父の住居跡があったという場所は、今では埋められていてなんの痕跡はありません。(なかったことにしてやがる笑)
踏み込んで、こうしたことを笑い話にしてしまう度量があったならよかったのになあと思わずにはいられません。
伝説の秩父原人チプーワインとかね。(専門家からしたら怒り心頭になるでしょうけど笑)

考古学は、憑いてしまうほどの学問なのでしょうね。

by masagorotabi | 2019-03-11 21:06 | 読書日記 | Comments(0)

流転の海

「流転の海」(宮本輝著)を読む

40年近く前の作品で、戦後の闇市から物語は始まります。

主人公は豪傑のイメージの50歳くらいの男で、戦争でとん挫した会社を戦後に再生して物語は進みます。

この物語は8部まであって、昨年完結したようです。

by masagorotabi | 2019-03-09 21:48 | 読書日記 | Comments(0)

古典

「これで古典がよくわかる」(橋本治著)を読む

古典の難しさについては、人間は複雑なのだからそんなに簡単には分かりやすくとはいかないと記しています。

清少納言や紫式部が活躍した10世紀は、高度な文化を保持していたとあります。

現代日本語のルーツは、漢字ひらがなを使った鎌倉時代で、なぜこの時代から古典に入らないのかと疑問を呈しています。

明治政府は、自分たちの政府を平安時代と重ね、高貴というかそういった立場を誇示したかったようで、それがかえって古典を遠ざけてしまったといったようなことも書かれてありました。

今のような便利な生活をしていなかった世界では、月や星を見るだけで感情が高ぶったり感性が磨かれていくということもあったのだろう。
だから現代人が古典に触れるという意味合いもあるのだろう。

いまいち古典に興味が持てない人にとっては、この本はうってつけだと思います。



by masagorotabi | 2019-03-07 20:53 | 読書日記 | Comments(0)

静かな大地

「静かな大地」(池澤夏樹著)を読む

明治期に、淡路から北海道へ渡った武士たちの話から始まります。
一話一話独立した形の小説になっています。

アイヌの女性と結婚をして、牧場を作り、アイヌの人たちを雇い入れて成功させるも、当時はアイヌは蔑まされた目で見られていたので、だんだんと追い詰められていってしまいす。
このくだりが読んでいて辛いものがありました。

北海道開拓といっても、そもそもアイヌの人たちが住んでいた土地です。
自然を神とたたえた生活をするアイヌと、開拓といって木を伐ることで始まる開拓民とは生活の形式が違います。

色々と考えさせられる小説でした。

他に砂金堀りの男の話があったのですが、北海道の川では砂金が豊富?に採れるようです。
1人の男が生活するには十分だったと書かれていました。
たんぱく源となるイワナやヤマベ(ヤマメ)も豊富に住んでいるし、厳しい冬を過ごせれば生活も確保されていた時代だったのですね。
ある意味では、古き良い時代だったのかもしれません。
その砂金採りの男が、牧場で働いたり、砂金採りの帰りにその牧場の奥さんに砂金をプレゼントするくだりがあるのですが、その砂金を指輪にするという話はいい話だったなあと思いました。

また読み返すことになる小説でした。

余談ですが、私の住んでいる町の荒川でも微量ながら砂金が採れます。
試しに、砂金でも採りにいってみようかなあ。

by masagorotabi | 2019-03-02 20:43 | 読書日記 | Comments(0)

日本文化における時間と空間

「日本文化における時間と空間」(加藤周一著)を読む

日本では、過去の不都合なことを「水を流す」という態度をとります。
だから、ことを起こしてしまったら誠心誠意謝る、そして明日のことは明日の風が吹くことで、ことを収める。

江戸時代の鎖国制度は知られていますが、その前にも開放鎖国ということを繰り返しています。(遣唐使の廃止など)
必要でなくなったら、国内で熟成させる。
そういった政策を日本はとってきました。

日本と隣国のとの間で、いまだにわだかまりがありますが、ドイツは未だにアウシュビッツを追及し、日本は南京虐殺を過去のものとして水に流そうとしてしまう。(本書に書かれている内容です)

こうした背景には、日本が歩んできた文化というものが深く影響しているのだろう。
ただ、もう鎖国は出来ない社会情勢なので、分かり合うためには、水に流せないこともあるということを認識する必要があるのではと思うのである。

by masagorotabi | 2019-02-26 20:11 | 読書日記 | Comments(0)

満州開拓民

「満州開拓民悲史」(高橋建男著)を読む

はじめに、戦後のドミニカ移民のことが語られています。
過剰人口のために、ドミニカへの移住を募集して行ったみたものの、1ヘクタールの土地をただでもらえるということでしたが、話と違った条件が彼らを待ち受けていました。
希望に胸を膨らませた心は、いとも簡単に落胆へと向かってしまいました。

満州・・・この言葉はよく耳にしますが、どんなことが実際に起きたのかはよく知りませんでした。
ソ連兵を殺してしまい、2000人もの人が逆に殺されてしまったり、我が子に手をかけなければならない状態になったり、集団自殺、病気や餓死、生き地獄のような出来事に見舞われます。

かたくなに当時のことを話すことを拒んだりする方たちもいますが、少しでも話しておきたいという人たちもいます。
そうした人たちの言葉に耳を傾けることしかできないので、私の気持ちを述べたりするということもありません。
想像を絶する出来事には、そうする以外にはないからです。

by masagorotabi | 2019-02-24 19:24 | 読書日記 | Comments(0)

日本人慰安婦

「日本人『慰安婦』(愛国心と人身売買と)」を読む

南京での強姦が酷かったので、従軍慰安婦を帯同させたと以前読んだ本に書かれてありました。

慰安婦にされた日本人は、もともと芸妓(げいぎ)、娼妓(しょうぎ)、酌婦(しゃくふ)であって、人身売買さた人たちが多かったといいます。
強制的なことはなかったにしろ、「お国のため」という文句や、詐欺みたいな形で連れていかれた人たちもいたそうです。

後に「楽しかった」と語る人たちもいたそうですが、慰安婦として働く前後が過酷であったということも忘れてはなりませんとあります。

慰安婦として働いている間も、DVや威張っている軍人、一日に二桁以上の相手をさせられるなど、過酷な労働をさせられます。

戦後は故郷へも帰れず、幸福とは程遠い生活を過ごす方が多かったそうです。

商売として、あるいは給料が良かったとか言われていますが、過酷な労働や人身売買としての彼女たちの不自由さ心的肉体的な苦労を考えると、好き好んでこういった商売をしている人たちではなかったはずです。

他にも、朝鮮や中国の占領地での強姦、暴力でPTSDになった女性たちのことも少し書かれてありますが、なんとも言えない気持ちになります。



by masagorotabi | 2019-02-23 20:05 | 読書日記 | Comments(0)